永住許可が厳格化⚠️ 「日本人世帯の平均年収」「出国は通算2年6か月まで」新ガイドラインの全ポイント
永住許可の審査基準が大きく変わりました
年収・年金・日本語・出国日数・配偶者特例まで、新しいガイドラインのポイントを行政書士がわかりやすく解説します。
2026年(令和8年)10月1日、出入国在留管理庁は「永住許可に関するガイドライン」を改定しました。これまで1ページ程度だったガイドラインが大幅に書き直され、審査で見られるポイントが具体的に書かれるようになりました。この記事では、永住申請を考えているベトナムの皆さんに特に関係が深い点を中心に解説します。
1. いつから適用されるのか
ガイドラインは、改定内容を2027年4月1日以降の申請から適用するとしつつ、収入と公共の負担の2つだけは、改定日(2026年10月1日)の6か月前の日以降に申請され、改定日に審査中の案件にも適用するとしています。
手数料も大幅に値上げ
2026年10月1日から永住許可の手数料も引き上げられています(報道によると1万円から20万円)。不許可で再申請すると負担が大きくなるため、申請前の準備がこれまで以上に大切です。
2. 永住許可の3つの要件をくわしく
入管法第22条第2項は、永住許可の要件として次の3つを定めています。今回の改定で、それぞれの中身がはっきり書かれました。
① 素行善良要件
法律を守り、日常生活でも住民として社会的に非難されることのない生活をしていることです。ガイドラインは、違法行為や迷惑行為を繰り返していたような場合に、この要件に適合しないとしています。刑罰を受けたかどうかではなく、生活態度全体が見られる点がポイントです。たとえば交通違反の反則金を何度も繰り返している、近隣とのトラブルを繰り返している、といった事情がここで問題になります。
配偶者・子は不要
② 独立生計要件
公共の負担にならず、将来も安定した生活ができると見込まれることです。新ガイドラインでは「日本人と同等水準以上の経済条件」が求められるとし、①今の収入(世帯年収)と②将来の年金見込額の2つを具体的な考慮要素にしました。原則として本人だけでなく、生計を同じくする世帯単位で判断されます。
配偶者・子は不要難民認定者等は不要
③ 国益要件
その人の永住が日本の利益になると認められることです。新ガイドラインは「単に国益に反しないだけでなく、積極的かつ具体的に日本に利益をもたらす必要がある」と明記しました。考慮要素は、入管法上の義務の遵守、税金・社会保険料の支払い、刑罰歴、上陸許可基準への適合、在留期間・出国日数、公共の負担、日本語能力、制度の理解、子どもの就学など10項目です。
配偶者・子も必要
ここが大事
日本人・永住者・特別永住者の配偶者や子どもは①と②が免除されますが、③国益要件は免除されません。つまり配偶者の方でも、税金や年金の未納、罰金刑、日本語能力などは審査されます。さらに、配偶者等であっても世帯が生活保護を受けているなど公共の負担となっている場合は、特段の事情がなければマイナス評価になりうるとされています。
3. 収入:日本人世帯の平均とはいくらか
新ガイドラインは、申請者の世帯年収が「世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準」に継続して達しているかを考慮するとしています。ただし、入管庁は具体的な金額や、どの統計を使うかをまだ公表していません。参考として、日本人世帯の収入に関する公的統計を紹介します。
| 統計(厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査」、2024年の所得) | 金額 |
|---|---|
| 全世帯の1世帯当たり平均所得 | 575万2千円 |
| 全世帯の所得の中央値 | 451万円 |
| 世帯員1人当たり平均所得 | 259万2千円 |
| 高齢者世帯以外の世帯の平均所得 | 700万7千円 |
| 児童のいる世帯の平均所得 | 857万3千円 |
このほか、総務省の家計調査では単身の勤労者世帯の平均年収は約450万円と報じられています。入管庁がどの統計・どの世帯区分を基準にするかは、2026年10月2日時点で公表されていません。
ケースで考えてみましょう(イメージ)
夫が「技術・人文知識・国際業務」で年収480万円、妻が「家族滞在」でアルバイト年収100万円、子ども2人の4人家族の場合。
- 妻のアルバイト収入は資格外活動による収入なので、世帯年収に合算されません。世帯年収は480万円として見られます。
- 全世帯平均の575万2千円、児童のいる世帯の平均857万3千円のどちらと比べても下回ります。
- さらにベトナムのご両親を扶養に入れていれば、世帯人数は6人として数えられ、基準額はもっと上がります。
※入管庁が基準額を公表していないため、2026年10月2日時点の公的統計にもとづくイメージです。実際の基準とは異なる可能性があります。
ベトナムの皆さんが特に注意したい点
- 申請者が扶養している親族は、海外に住んでいる親族も含めて世帯人数に加算されます。税金の扶養控除のためにベトナムの家族を扶養に入れている場合、求められる年収の基準も上がります。
- 「家族滞在」の家族のアルバイト収入は合算されません。夫婦の収入を合算したい場合は、家族も就労資格であることが必要です。
- 世帯が5人以上の場合は、生活費の増加分が基準額に上乗せされます。
- 成人して親の扶養から外れている子どもは、親の収入を合算せず、本人の収入で判断されます。
4. 年金:将来の年金見込額のシミュレーション
新ガイドラインは、これまでの年金の加入状況と現在の年収から将来の年金見込額を推計し、それが「日本人世帯の平均収入を上回る年収で30年間働き、厚生年金に加入した場合の年金額」(受給年金水準)に達しているかを考慮するとしています。入管庁は具体的な計算方法を公表していないため、公表されている年金額の例をもとに試算してみます。
試算:年収575万2千円で30年間厚生年金に加入した場合
厚生労働省が示す令和8年度のモデル年金(平均標準報酬45.5万円で40年加入した夫と専業主婦の妻で月23万7,279円、老齢基礎年金の満額は1人月7万608円)から逆算すると、次のようになります。
| 項目 | 月額の目安 |
|---|---|
| 老齢厚生年金(報酬比例部分)年収575万2千円×30年 | 約7万6千円 |
| 老齢基礎年金(加入30年分〜40年満額) | 約5万3千円〜7万1千円 |
| 合計 | 約12万9千円〜14万7千円(年間約155万〜176万円) |
受給年金水準はこのくらいの水準になると考えられます。配偶者がいる場合は、夫婦の見込額を合算し、配偶者が同じ期間、国民年金の第3号被保険者だった場合の年金額を基準に上乗せして比べるとされています。
※2026年10月2日時点で公表されている令和8年度の年金額をもとにした独自の概算です。賞与の扱い、標準報酬の上限、賃金の再評価、物価スライドなどは考慮していません。入管庁の実際の計算方法とは異なる可能性があります。
見込額が足りない場合でも、不足分を補える預貯金などの金融資産(補填資産)があれば、基準を満たしていると評価されます。補填資産の基準は申請時の年齢に応じて決まり、若い人ほど将来資産を形成できる期間が長いため、求められる額は低くなるとされています。
補填資産のイメージ(仮定の計算)
たとえば見込額が受給年金水準より月3万円少ない場合、年間で36万円の不足です。仮に65歳から20年分を補うと考えると、単純計算で720万円になります。実際には年齢による調整があり、入管庁の基準額は公表されていません。あくまで考え方のイメージとしてご覧ください。
脱退一時金に注意
帰国の際などに年金の脱退一時金を受け取ると、その期間は年金の加入期間として扱われなくなり、将来の年金見込額が下がります。将来日本で永住を考えている方は、脱退一時金の請求は慎重に判断してください。
5. 届出義務・税金・社会保険料
新ガイドラインは、入管法上の義務と税金・社会保険料の支払いについて、申請時点だけでなく過去の状況も原則としてマイナス評価の対象になると明記しました。「今は払っているから大丈夫」とは言えなくなっています。
| チェック項目 | 具体例 |
|---|---|
| 入管法上の届出 | 住所変更の届出、転職時の所属機関に関する届出(14日以内)、離婚時の配偶者に関する届出 |
| 在留カード | 常時携帯、提示義務、紛失時の再交付 |
| 資格外活動 | 留学・家族滞在の週28時間の制限を超えていないか |
| 税金 | 所得税・住民税などを期限内に納めているか、過去に滞納処分を受けていないか |
| 上陸許可基準への適合 | 今持っている在留資格の基準(例:技術・人文知識・国際業務なら学歴と業務内容の関連、日本人と同等以上の報酬)を今も満たしているか |
| 社会保険料 | 転職の間に国民年金・国民健康保険の未加入や未納がないか(世帯単位で審査) |
6. 刑罰:罰金と反則金の違い
過去に拘禁刑(懲役・禁錮)や罰金刑を受けた人、少年法による保護処分を受けている人は、原則としてマイナス評価になります。ここでよく誤解されるのが「罰金」と「反則金」の違いです。
| 罰金(赤切符) | 反則金(青切符) | |
|---|---|---|
| 性質 | 刑罰 裁判などの刑事手続で科される | 行政上の制裁 刑罰ではない |
| 前科 | つく | 期限内に納付すればつかない |
| 主な例 | 飲酒運転、大幅なスピード違反、無免許運転 | 一時不停止、軽いスピード違反、信号無視など |
| 永住審査 | 国益要件の「刑罰法令違反」として原則マイナス評価 | 刑罰ではないが、繰り返していれば素行善良要件で問題になりうる |
自転車にも青切符が始まりました
2026年4月1日から、16歳以上の自転車の交通違反にも反則金制度(青切符)が導入されました。反則金を期限内に納めれば刑事手続にはなりませんが、納めなければ刑事手続に進み、罰金になる可能性があります。また、酒気帯び運転など悪質な違反は引き続き赤切符(刑事手続)の対象です。通勤や買い物で自転車を使う方も注意してください。
7. 出国日数の基準が初めて明記
これまでのガイドラインには、出国日数の具体的な基準は書かれていませんでした。実務では、行政書士の経験や過去の審査例から「年間の出国日数が多すぎると不利」などと目安が語られてきましたが、公式の基準はなかったのです。今回の改定で、初めて次のように具体的な数字が明記されました。
どちらかに当てはまると、原則としてマイナス評価になります。「合理的な理由」があれば例外となる余地があります。ガイドラインに具体例は書かれていませんが、たとえば本国での出産や家族の看病・介護などが考えられ、その場合は理由を証明する資料を準備しておくことが重要です。出入国の記録は、出入国在留管理庁に「出入国記録」の開示請求をして確認できます。
居住期間のルールもあわせて確認
原則として引き続き10年以上日本に在留し、そのうち就労資格または居住資格で引き続き5年以上在留していることが必要です。次の在留資格の期間は、5年の就労資格の期間に数えられません。
技能実習育成就労特定技能1号企業内転勤一部の特定活動
たとえば技能実習と特定技能1号で合わせて10年日本にいても、5年の就労資格の期間は0年です。特定技能2号や技術・人文知識・国際業務に変更してから5年が必要になります。また、今の在留資格で最長の在留期間を持っていることも考慮されます。在留期間「3年」を最長とみなす扱いは、2027年3月31日までの申請に限られます(一部経過措置あり)。
8. 日本語B1とはどのくらいか
新ガイドラインは、文化庁の「日本語教育の参照枠」でB1相当以上の日本語能力を持っているかを考慮するとしています。B1は「自立した言語使用者」と呼ばれる段階の入口で、おおむね次のようなことができるレベルです。
- 仕事や学校、趣味など身近な話題について、はっきりした標準的な話し方なら、要点を理解できる
- 役所や病院、旅行先などでよく起こる場面に、日本語で対応できる
- 身近な話題について、つながりのある簡単な文章を書ける
- 自分の経験や予定、意見とその理由を、簡単に説明できる
日本語能力試験(JLPT)との関係
JLPTは2025年12月の試験から、合格者の結果にCEFRレベルの参考表示を加えています。B1と表示されるのは次の場合です。
| レベル | 総合得点とCEFR参考表示 | B1以上の範囲 |
|---|---|---|
| N1 | 100〜141点:B2/142点以上:C1 | |
| N2 | 90〜111点:B1/112点以上:B2 | |
| N3 | 95〜103点:A2/104点以上:B1 | |
| N4 | 90点以上:A2 |
注意点
- N3に合格してもB1とは限りません。104点以上でB1と表示されます。
- 2025年7月以前に受験した人の結果には、CEFRの参考表示がありません。
- JLPTの参考表示は「読む・聞く」の能力にもとづくもので、「話す・書く」は含まれていません。
- 永住審査でどの試験の結果をB1の証明として認めるかは、2026年10月2日時点で入管庁から公表されていません。
なお、高度人材とその家族、日本で小中学校などの教育を通算6年以上受けた人、一定の条件を満たす永住者の子などは、この考慮要素の対象外とされています。
9. 制度の理解・子どもの就学
日本の制度・ルールの理解
入管庁長官が指定する方法で、「生活・就労ガイドブック」の内容を中心に、日本の制度やルールを理解しているかが確認されます。具体的な確認方法は今後発表される予定です。
学齢期の子どもの就学
義務教育の年齢の子どもを育てている場合、その子が小学校または中学校に通っているかが考慮されます。
10. 配偶者などの特例の変更
原則10年の在留期間が短くなる特例のうち、日本人・永住者・特別永住者の配偶者と子どもについては、2027年4月1日以降の申請から次のように変わります。
| 改定前 | 改定後 | |
|---|---|---|
| 配偶者 | 結婚3年以上・日本在留1年以上 | 結婚5年以上・日本在留3年以上 |
| 実子など | 日本在留1年以上 | 日本在留3年以上 |
「定住者」で5年以上、高度人材ポイント70点以上で3年以上、80点以上で1年以上などの特例は引き続き定められています。
11. 今からできる準備とよくある質問
- 自分の申請時期にどの基準が適用されるか確認する
- ねんきんネットや課税・納税証明書で、過去の税金・年金・健康保険の納付状況を確認する
- 海外の家族を扶養に入れている場合、世帯人数と年収の関係を確認する
- 出入国記録を確認し、1回6か月以上・通算2年6か月以上の出国がないか確認する
- 住所・勤務先などの届出に漏れがないか確認する
- 2027年4月以降に申請する予定なら、日本語B1の証明の準備を始める
Q. 今、審査中です。新しい基準が適用されますか?
2026年4月1日以降に申請し、10月1日の時点で審査中の場合、収入と公共の負担については新しい基準が適用されます。それ以外の項目は旧基準です。収入が足りない可能性がある場合は、早めにご相談ください。
Q. 日本人の配偶者ですが、2027年3月までに申請すれば旧基準ですか?
配偶者特例(結婚5年・在留3年)や日本語B1などは2027年4月1日以降の申請から適用されるため、それより前の申請は旧基準の「結婚3年・在留1年」が使われます。ただし収入の基準については取扱いを確認する必要があります。
Q. 技能実習から特定技能1号に変わり、合計8年日本にいます。永住は申請できますか?
技能実習と特定技能1号の期間は、5年の就労資格の期間に数えられません。特定技能2号や技術・人文知識・国際業務などに変更してから、さらに5年の在留が必要です。
Q. 交通違反の青切符を何度か切られました。永住に影響しますか?
反則金は刑罰ではないため、罰金刑のように刑罰法令違反としてマイナス評価されることはありません。ただし、何度も繰り返している場合は素行善良要件で問題になる可能性があります。
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電話 078-223-2319(10:00〜19:00)
行政書士 HO THE CUONG(HO行政書士事務所 代表、兵庫県行政書士会所属)。ベトナム人のための入管手続を専門としています。
出典
- 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年10月1日改定)」
- 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
- 日本語能力試験公式サイト「CEFRレベルの参考表示」
- 警察庁「自転車の新しい制度(交通反則通告制度)」
本記事は2026年10月2日時点の情報にもとづいています。年収・年金の試算は入管庁が基準額や計算方法を公表していない段階での独自の概算であり、実際の審査基準とは異なる可能性があります。個別のケースについては専門家にご相談ください。


