離婚定住は「婚姻3年」では不許可に?日本人実子扶養定住との違いと、離婚後14日・6か月のルール
日本人の夫(妻)と離婚・死別したら、日本に住み続けられる?
「離婚定住」と「日本人実子扶養定住」を行政書士が一次資料から解説します。
⏱ 読了時間:約11分 / 2026年10月時点の情報
日本人と結婚して「日本人の配偶者等」の在留資格で暮らしている方が、しかし、離婚や死別をしたとき、そのままでは日本に住み続けることはできません。ただし、事情によっては「定住者」への変更が認められることがあります。なお、実務では、日本人の子どもを育てる場合を「日本人実子扶養定住」、子どもがいない場合などを「離婚定住」「死別定住」と呼んでいます。
そこで、この記事では、入管庁の公表資料にもとづいて、2つの道の違い、離婚後すぐにやるべきこと、そして「婚姻3年あれば大丈夫」とは言えなくなってきている最新の実務を説明します。
目次
1. 離婚・死別したら、まず何が起こる?
離婚や死別をしても、在留カードの「日本人の配偶者等」がその日に無効になるわけではありません。つまり、在留期限までは有効です。ただし、次の2つのルールがあります。
① 14日以内に入管へ届出
「日本人の配偶者等」(日本人の配偶者の身分の方)は、離婚または死別の日から14日以内に「配偶者に関する届出」をしなければなりません(入管法第19条の16第3号)。なお、オンライン、地方入管の窓口、郵送のいずれでも届け出できます。
② 6か月を過ぎると在留資格取消しの対象
配偶者としての活動を継続して6か月以上行っていないと、在留資格取消しの対象になります(入管法第22条の4第1項第7号)。ただし、正当な理由がある場合は除かれます。実際に、入管庁は、取消しを行わない例として次の4つを公表しています。
取消しを行わない具体例(入管庁・平成24年7月)
・配偶者からのDVを理由に、一時的に避難・保護が必要な場合
・子どもの養育などやむを得ない事情で別居しているが、生計は同じ場合
・本国の親族の病気などで、再入国許可により長期間出国している場合
・離婚調停または離婚訴訟中の場合
また、同じ資料には、6か月以上配偶者としての活動がなくても「日本国籍を持つ実子を監護・養育しているなどの事情がある場合は、他の在留資格への変更が認められる場合がある」とも書かれています。
「在留期限がまだ先だから大丈夫」と放っておく方が多いのですが、実際には6か月のルールがあります。そのため、離婚が決まったら、届出と同時に今後の在留資格を考え始めてください。
2. 離婚定住と日本人実子扶養定住の違い
どちらも「定住者」ですが、根拠も審査の重点もまったく違います。そのため、まず自分がどちらに当てはまるかを確認しましょう。
| 日本人実子扶養定住 | 離婚定住・死別定住 | |
|---|---|---|
| 対象 | 日本人の実子(未成年・未婚)を育てる外国人親 | 日本人配偶者と離婚・死別した方(子どもの有無を問わない) |
| 根拠 | 平成8年7月30日の入管局長通達 | 告示に定めなし(告示外)。そのため個別判断 |
| 審査の中心 | 親子関係・親権・実際に育てていること | 婚姻の実体、日本での在留期間、生計、素行など |
| 在留年数の基準 | 通達上の年数要件なし | 公表された基準なし(後述) |
| 見通し | 要件を満たせば比較的明確 | 一方、近年は厳しくなっている |
3. 日本人実子扶養定住:日本人の子を育てる場合
まず、平成8年7月30日の通達では、未成年かつ未婚の日本人の実子を扶養するため日本に残りたい外国人親について、次の3点が確認できれば「定住者」(1年)への変更を許可してよいとされています。
- 子どもとの親子関係があること
- その子の親権者であること
- 現に相当期間、その子を監護・養育していること
「日本人の実子」とは
具体的には、通達では、結婚している夫婦の子か否かを問わず、子が生まれた時点で父または母が日本国籍を持っていた子をいいます。また、子ども本人が日本国籍を持っているかは問いません。ただし、日本国籍のない婚外子の場合は、日本人の父から認知されていることが必要です。
収入が少なくても大丈夫?
この点について、実務上は、元配偶者からの養育費、本人の就労収入、公的な支援なども含めて、子どもを育てていける状況かが見られると解説されています。つまり、収入の多さより、実際に子どもと暮らし、育てていることが中心です。
注意
一方、親権が元配偶者(日本人)にある場合や、子どもと一緒に暮らしていない場合は、この道は使えません。したがって、離婚の条件(親権・面会・養育費)を決める前に相談してください。
4. 離婚定住・死別定住:子どもがいない場合
一方、日本人の子どもがいない場合でも、「定住者」が認められることがあります。ただし、告示に定めがない「告示外」の類型なので、入管が一件ずつ判断します。
入管庁が公表している離婚定住の事例
実際に、入管庁は「日本人の配偶者等」から「定住者」への変更について、許可7件・不許可6件の事例を公表しています(平成24年7月、平成29年3月改訂)。一部を紹介します。
| 結果 | 婚姻期間 | 日本での在留 | 主な事情 |
|---|---|---|---|
| 許可 | 約3年 | 約5年1か月 | 前配偶者のDVで婚姻が事実上破綻。看護助手として収入あり |
| 許可 | 約6年1か月 | 約13年8か月 | 子なし。事業を経営し収入あり |
| 許可 | 約11年5か月 | 約10年5か月 | DVが原因で通算8年以上別居 |
| 不許可 | 約3年11か月 | 約4年1か月 | 単身で約1年9か月、日本国外に滞在 |
| 不許可 | 約2年1か月 | 約3年3か月 | DVの申立てが虚偽と判断 |
| 不許可 | 約3か月 | 約4か月 | 婚姻・同居期間が3か月未満 |
しかし、この公表資料には、「婚姻3年」「日本で3年」といった一般的な基準は書かれていません。
離婚定住の「3年」はもう安全ラインではない
確かに、これまで実務では「日本での婚姻生活がおおむね3年以上」が目安とされてきました。しかし、これは公表された基準ではありません。
さらに、2026年には、行政書士間の情報共有によると、婚姻9年・日本人の配偶者等として日本に4年5か月在留していた方の変更申請が、「他は問題ないが在留期間が足りない」という理由で不許可になった例が報告されています。入管の担当者は「何年なら大丈夫とは言えないが、3年では無理になった」と説明したとのことです。
加えて、入管庁は2026年10月1日に永住許可ガイドラインを改定し、日本人の配偶者の特例を「婚姻3年・在留1年」から「婚姻5年・在留3年」に引き上げました(2027年4月1日以降の申請から適用)。もちろん、定住者の基準が変わったという公式発表はありません。それでも、配偶者に関する在留年数の見方が全体的に厳しくなっている流れの中にあると考えられます。
「3年たったから大丈夫」とネットで読んで、準備なしに申請するのは危険です。なぜなら、告示外の定住者には、何年あれば安全という線がないからです。したがって、婚姻の実体、収入、日本での生活の根っこを、資料でしっかり示す必要があります。
離婚定住の審査で見られるポイント
- 日本での婚姻生活に実体があったか(同居、生活費の分担など)
- 日本での在留期間の長さ
- 長期間の単身出国がないか
- 自分の収入で生活できるか(独立生計)
- 税金・社会保険をきちんと納めているか、素行に問題がないか
- 日本で生活を続ける必要性(仕事、地域とのつながりなど)
なお、収入・納税・素行などは、入管庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(最終改正 令和8年6月)でも考慮要素として示されています。
死別の場合
同様に、配偶者と死別した場合も、考え方は離婚定住と同じく告示外の個別判断です。また、死別の場合に何年必要かについても、公表された基準はありません。
5. 離婚定住・実子扶養定住で離婚を証明する書類
申請では、まず離婚したこと、そして子どもがいる場合は親権を証明する必要があります。ところが、外国人の元妻は元夫の戸籍謄本を自由に取れません。戸籍謄本を請求できるのは、その戸籍に記載されている人と、その配偶者・直系尊属・直系卑属だけだからです(戸籍法第10条第1項)。しかも、外国人は日本の戸籍に記載されず、離婚すれば配偶者でもなくなります。
離婚定住の申請に使える書類(状況別)
| 状況 | 使える書類 | ポイント |
|---|---|---|
| 協議離婚(役所に離婚届を出した) | 離婚届受理証明書 | 夫婦2人とも届出人なので、外国人の元妻も、離婚届を出した市区町村で請求できます(戸籍法第48条第1項) |
| 調停・裁判で離婚した | 調停調書の謄本/判決書の謄本と確定証明書 | 自分が離婚届の届出人でない場合は、こちらで離婚を証明するのが一般的です |
| 日本人の子どもがいる | 子どもが記載されている戸籍謄本 | 母は子の直系尊属なので請求できます。子の戸籍には親権者も記載されるため、親子関係と親権を1通で示せます |
| 子どもがいない | (元夫の戸籍謄本は原則取得不可) | 第三者としての請求(戸籍法第10条の2)は、認めるかどうか役所の窓口の判断です |
「離婚届記載事項証明書」は取れる?
窓口の判断に注意
届書の記載事項証明書は、「利害関係人で、特別の事由がある場合」に限って請求できる書類です(戸籍法第48条第2項)。そのため、入管への提出のために出してもらえるかは窓口の判断になります。したがって、まずは受理証明書や子どもの戸籍謄本で準備するのが確実です。
そこで、離婚届を出すときに、受理証明書も一緒に請求しておくと後で困りません。また、日本人の子どもがいる方は、親権者が誰になっているか、子どもの戸籍謄本で必ず確認してください。
6. 定住者が難しいときの選択肢
ただし、定住者の要件に届かない場合でも、ほかの在留資格で日本に残れる可能性があります。
| 選択肢 | 主な条件 |
|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務(visa Kỹ sư) | 大学・専門学校の学歴と、それに関連する仕事に就くこと |
| 特定技能 | 分野ごとの技能試験と日本語試験に合格し、受入れ企業と雇用契約を結ぶこと |
| その他 | 状況によって検討(帰国して再入国を目指す場合も含む) |
絶対にやってはいけないこと
在留資格を得るためだけの結婚(偽装結婚)は犯罪です。しかも、発覚すると退去強制になり、本人も相手も処罰の対象になります。
7. ベトナム人が特に注意すること
子どもをベトナムの祖父母に預けていませんか?
実子扶養定住は「日本で実際に子どもを育てていること」が前提です。そのため、子どもをベトナムの実家に預けている間は、この要件を満たしません。
離婚前後の長期帰国
実際に、公表事例でも、約1年半〜1年9か月の単身出国が不許可の理由になっています。したがって、手続きが終わるまで、長期の帰国は避けてください。
ベトナム側の手続き
日本で離婚した場合、ベトナム側でも離婚の記録手続きが必要になることがあります。そのため、在日ベトナム大使館・総領事館で確認してください。
技能実習・特定技能から結婚した方
以前の在留資格に戻れるわけではありません。例えば、特定技能に戻る場合も、改めて試験や雇用契約などの要件を満たす必要があります。
8. ケース例
※よくある相談をもとに構成した架空の事例です。
日本人の夫と結婚して6年。5歳の子どもがいます。離婚にあたり、Aさんが親権者になり、子どもと一緒に神戸で暮らしています。現在は、パートの収入と元夫からの養育費で生活しています。
→ 親子関係、親権、実際に育てていることを資料で示し、実子扶養定住への変更を申請。
Bさんは、技能実習の後に日本人と結婚し、日本人の配偶者等として3年半。子どもはいません。また、工場の正社員として働いています。
→ 以前なら「3年」を目安に離婚定住を検討するケースでした。しかし、今は在留期間だけで不許可になるリスクがあります。そのため、離婚定住と並行して、特定技能など就労資格の可能性も検討。
9. チェックリスト
- 離婚・死別から14日以内に「配偶者に関する届出」をした
- 在留期限の日付を確認した
- (子どもがいる場合)親権者が自分になっている
- (子どもがいる場合)子どもと日本で一緒に暮らしている
- 日本人の夫(妻)と日本で同居していた期間を説明できる
- 住民税・国民健康保険・年金をきちんと納めている
- 仕事と収入を証明できる(在職証明書、課税証明書など)
- 長期間の帰国の予定がない
- 離婚の条件を決める前に専門家に相談した
10. 離婚定住についてよくある質問
離婚後の在留とルール
離婚したら、すぐにベトナムへ帰らなければいけませんか?
いいえ。在留期限までは今の在留資格が有効です。ただし、14日以内の届出と、6か月のルールがあるので、早めに今後の在留資格を決めて申請してください。
離婚調停中ですが、6か月を過ぎたら取消しになりますか?
入管庁は、離婚調停・離婚訴訟中の場合を、取消しを行わない例として公表しています。ただし、調停中であることを示す資料は準備しておいてください。
離婚定住の要件について
婚姻期間が3年以上あれば離婚定住は取れますか?
保証はできません。なぜなら、「3年」は公式の基準ではないからです。さらに、2026年には日本での在留が4年を超えていても在留期間を理由に不許可になった例が報告されています。したがって、個別に事情を整理して判断する必要があります。
定住者になれば、その後永住も申請できますか?
はい、定住者から永住を申請する道はあります。ただし、永住許可の要件は2026年10月に改定されています。詳しくは関連記事をご覧ください。
子ども・書類について
子どもの国籍がベトナムでも実子扶養定住は使えますか?
通達上、子ども本人の日本国籍の有無は問いません。つまり、子どもが生まれた時点で父または母が日本国籍であれば「日本人の実子」です。ただし、婚外子の場合は日本人の父の認知が必要です。
収入が少ないと実子扶養定住は不許可になりますか?
収入だけで判断されるわけではありません。むしろ、養育費や公的な支援も含めて、子どもを育てていける状況かが見られます。そのため、生活状況を資料で説明することが大切です。
元夫の戸籍謄本が取れません。どうすればいいですか?
離婚後は配偶者ではなくなるため、元夫の戸籍謄本は原則取れません。その代わり、協議離婚なら、離婚届を出した市区町村で「離婚届受理証明書」を請求できます。また、日本人の子どもがいる場合は、子どもが記載されている戸籍謄本を母として請求でき、親権者も確認できます。
離婚定住のご相談はHO行政書士事務所へ
参考資料(一次資料)
- 出入国在留管理庁「配偶者に関する届出」
- 出入国在留管理庁「在留資格の取消し(入管法第22条の4)」
- 出入国在留管理庁「配偶者の身分を有する者としての活動を行わないことに正当な理由がある場合等在留資格の取消しを行わない具体例について」(平成24年7月)
- 出入国在留管理庁「『日本人の配偶者等』又は『永住者の配偶者等』から『定住者』への在留資格変更許可が認められた事例及び認められなかった事例について」(平成24年7月、平成29年3月改訂)
- 法務省入国管理局長通達「日本人の実子を扶養する外国人親の取扱いについて」(平成8年7月30日)
- 出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(最終改正 令和8年6月)
- 戸籍法(第10条、第10条の2、第48条)
- 東京法務局「戸籍届書類の記載事項証明書の交付請求について」
- 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン」(令和8年10月1日改定)

