【入管の申請書】「犯罪を理由とする処分」欄に何を書く?前科・前歴・交通違反を行政書士が解説
入管の申請書「犯罪を理由とする処分」欄に何を書く?
前科・前歴・不起訴・交通違反まで、書くものと書かなくてよいものを一次資料にもとづいて整理します。
入管の申請書には、「犯罪を理由とする処分を受けたことの有無」という欄があります。在留期間の更新、在留資格の変更、在留資格認定証明書、永住のどの申請書にもある欄です。たとえば「不起訴になった」「スピード違反でお金を払った」という経験があると、「有」と「無」のどちらにすべきか迷います。そこでこの記事では、犯罪を理由とする処分の欄に何を書くべきかを、条文や入管の資料にもとづいて解説します。
結論:「犯罪を理由とする処分」欄の判断の目安
- 有罪判決(罰金を含む)は、何年前でも、日本国外のものでも必ず「有」
- 裁判所に行かない「略式命令」の罰金も前科なので「有」
- 不起訴は、一般に「無」でよいとする考え方が多数
- 反則金(青切符)は見解が分かれる。ただし当事務所は「申告すべき」という立場
- 交通違反の「許容回数」は公表されていない。あくまで実務家の目安があるだけ
目次
申請書のどこに「犯罪を理由とする処分」の欄があるのか
まず、欄の場所と文言を確認しましょう。在留期間更新・在留資格変更の申請書では、1枚目の項番15にあります。なお、在留資格認定証明書交付申請書では項番19です。
15犯罪を理由とする処分を受けたことの有無(日本国外におけるものを含む。)※交通違反等による処分を含む。
□ 有(具体的内容 ) □ 無
この文言から、大事な点が3つ分かります。第一に、日本国外での処分も含まれます。第二に、交通違反等による処分も含むと明記されています。第三に、「過去○年以内」といった期間の限定がありません。また、「有」の場合は罪名と処分の内容を具体的に書くよう求められています。
「犯罪を理由とする処分」に不起訴は入る?前科と前歴のちがい
「前科」と「前歴」は、法律で定義された言葉ではありません。一般に、前科は有罪判決を受けた経歴を指します。一方、前歴は捜査を受けたものの、有罪判決には至らなかった経歴です。たとえば不起訴や微罪処分がこれに当たります。そして、有罪判決が「犯罪を理由とする処分」に当たることには争いがありません。
| 経歴 | 具体例 | 申請書の欄 |
|---|---|---|
| 拘禁刑(旧:懲役・禁錮)の判決 | 実刑、執行猶予付きのどちらも | 「有」 |
| 罰金の判決 | 正式裁判の罰金、略式命令の罰金 | 「有」 |
| 不起訴 | 嫌疑なし・嫌疑不十分・起訴猶予 | 一般に「無」でよいとする見解が多い(※) |
| 微罪処分 | 警察段階で終わり、検察に送られなかったもの | 一般に「無」でよいとする見解が多い(※) |
※ただし、入管が「不起訴は記載不要」と明言した公式資料は見当たりません。不起訴は刑罰ではないので、「無」とするのが多くの専門家の考え方です。とはいえ、入管は警察などから情報を得られる立場にあります。そのため、素行の審査で事実関係を聞かれることはあります。
特に、逮捕されて報道されたケースは注意が必要です。また、似た事件が何度もあるケースも同様です。こうした場合は、申請前に専門家と相談しましょう。必要なら、理由書で経緯を説明するほうが安全です。
略式命令の罰金も「犯罪を理由とする処分」になる
よくある誤解:「裁判に行っていないから前科ではない」
たとえば、検察で手続きをした後、簡易裁判所から書類が届いて罰金を払ったとします。これは略式命令による罰金刑です。つまり、正式な有罪判決と同じく前科になります。飲酒運転や万引きでよくあるパターンです。したがって、「裁判に出ていない=前科ではない」と思い込まないでください。
交通違反は「犯罪を理由とする処分」に入る?反則金と罰金のちがい
交通違反で払うお金には、「反則金」と「罰金」の2種類があります。どちらも同じように見えますが、法的な性質はまったく違います。
まず、反則金は道路交通法の交通反則通告制度(青切符)によるお金です。つまり、刑罰ではありません。期間内に納めれば、その違反で起訴されないと法律で定められています(道路交通法128条2項)。
これに対して、罰金は刑法9条が定める刑罰の一つです。検察官の起訴を受けて、裁判所が科します。そのため、罰金を受けると前科になります。
反則金と罰金を比べると
| 比べるポイント | 反則金(青切符) | 罰金(赤切符など) |
|---|---|---|
| 法的な性質 | 交通反則通告制度によるお金。刑罰ではない | 刑法上の刑罰(主刑の一つ) |
| 主な違反 | 一時不停止、信号無視、携帯電話の使用、駐車違反など | 酒気帯び・酒酔い運転、大幅な速度超過、無免許運転、ひき逃げなど |
| 受け取る書類 | 青い「交通反則告知書」と納付書 | 赤い告知票(赤切符)。その後、裁判所の略式命令や判決 |
| 手続き | 期限内に納めれば終わり。検察・裁判所の手続きはない | 検察官が起訴し、略式命令か正式裁判で科される |
| 納めなかったら | 刑事手続に移り、罰金になることがある | 完納できないと労役場に留置されることがある |
| 前科になるか | ならない | なる |
| 申請書の欄 | 見解は分かれる。当事務所は記載を推奨 | 必ず「有」 |
「点数」や「免許停止」は別の手続き
なお、点数がたまって受ける免許停止・取消は、公安委員会による行政処分です。つまり、反則金とも罰金とも別の手続きです。たとえば酒気帯び運転では、罰金と免許停止の両方を受けることがあります。そのため、受け取った書類をすべて確認してください。
母国語では、反則金と罰金を同じ言葉で言うことが多いです。たとえばベトナム語では、どちらも「bị phạt」です。だから相談でも、中身が分からないことがよくあります。まずは、手元に青い紙と納付書だけか、裁判所の「略式命令」があるかを確認してください。
反則金だけの場合、「犯罪を理由とする処分」欄は「有」?「無」?
反則金は刑罰ではないので、「無」でよいと考える専門家は少なくありません。他方で、申請書には「交通違反等による処分を含む」と書かれています。そのため、反則金も記載すべきだと説明する専門家もいます。しかし、入管はこの点の公式な解釈を公表していません。つまり、「これが正解」と言い切れる根拠はないのが現状です。
当事務所のスタンス:反則金も申告すべき
当事務所のお客様の実例では、反則金を申告せずに更新が許可されたケースは数多くあります。しかし、それは入管が「申告不要」と認めたという意味ではありません。申請書に交通違反を含むと明記されている以上、記載しなかったことが虚偽申告とされる可能性は排除できません。
また、入管に問い合わせても、審査官の回答には一貫性がないのが実情です。そこで当事務所では、反則金だけでも「有」として、違反の種類・時期・納付済みであることを書くようおすすめしています。
交通違反は何回までなら大丈夫?(実務家の見解)
入管は、交通違反が何回までなら許可されるかという基準を公表していません。以下は、行政書士が実務経験にもとづいて示している目安です。したがって、公式の基準ではありません。また、違反の内容や、直近に集中しているかによって評価は変わります。
| 申請 | 実務家が示す目安(いずれも非公式) |
|---|---|
| 在留期間更新 | 青切符が数年で1〜2回なら影響はほぼない、とする見解があります。一方、過去1〜2年で3回以上なら専門家に相談を、とされます。過去5年で3回程度までなら通常は大きな影響はない、とする見解もあります。 |
| 永住申請 | 過去5年で5回以下が一つの目安で、過去2年で4回以上だと難しい、とする見解があります。さらに厳しく、直近2年で2回以上あるとリスクが高まる、とする見解もあります。 |
| 共通 | 赤切符(罰金)は回数とは別に扱われ、理由書での説明が必須とされます。特に永住では、罰金の執行を終えてから5年程度は申請を見送るよう勧める見解が多くあります。 |
なお、永住は更新より素行が厳しく見られます。そのため、違反の回数と時期を確認してから申請時期を決めましょう。違反歴がはっきりしない場合は、自動車安全運転センターの「運転記録証明書」で確認できます。
2026年4月から自転車も青切符の対象に
2026年4月1日から、16歳以上の自転車の運転者も青切符の対象になりました。運転免許の有無は関係ありません。たとえば反則金は、携帯電話の使用(保持)が12,000円、信号無視が6,000円、一時不停止が5,000円です。ただし、酒酔い運転などの悪質な違反は、これまでどおり赤切符です。特に、自転車で通学・通勤する方は注意してください。
古い前科も「犯罪を理由とする処分」として書く?(刑の消滅)
刑法34条の2は「刑の消滅」を定めています。具体的には、拘禁刑以上の刑の執行を終えた人が、罰金以上の刑を受けずに10年を経過すると、刑の言渡しは効力を失います。同様に、罰金以下の刑の場合は5年です。
なお、2025年6月1日施行の刑法改正で、懲役と禁錮は「拘禁刑」に一本化されました。また、執行猶予付き判決は、取り消されずに猶予期間を経過すると効力を失います(刑法27条1項)。ただし同じ改正で、猶予期間中に罰金以上の罪で起訴された場合は、期間が過ぎても効力が続くことになりました(同条2項)。
刑が消滅しても申請書には書くべき理由
では、刑が消滅していれば書かなくてよいのでしょうか。結論から言うと、そうとは言い切れません。なぜなら、申請書の欄は「処分を受けたことの有無」を尋ねていて、期間の限定がないからです。つまり、刑の言渡しが効力を失っても、処分を受けたという事実は消えません。
もっとも、この点について入管が公式に説明した資料は見当たりません。それでも実務上は、古い前科も「有」として書き、その後の生活状況を説明するのが安全です。
日本国外で受けた「犯罪を理由とする処分」も対象
申請書の欄は「日本国外におけるものを含む」としています。そのため、来日前に母国などで受けた有罪判決も記載の対象です。一方、刑事罰ではない行政上の処分の扱いは、日本の反則金と同じく判断が分かれます。たとえばベトナムの行政違反処罰(xử phạt vi phạm hành chính)がこれに当たります。判決書や処分の書類があれば、申請前に内容を確認させてください。
「犯罪を理由とする処分」を書かなかった場合のリスク
入管法22条の4第1項は、在留資格の取消し事由を定めています。入管の説明によると、虚偽の書類を提出して許可を受けた場合も取消しの対象です。しかも、この場合は本人の故意は要件とされていません。つまり、「書かなくていいと思っていた」という言い分が通るとは限らないのです。
一方で、処分歴があるだけで必ず不許可になるわけではありません。実際、審査では処分の内容や時期、回数、その後の生活状況などが総合的に見られます。だからこそ、正直に書いたうえで、反省や再発防止策を理由書で説明するほうが安全です。
「友達が『無にしておけば大丈夫』と言っていた」という相談をよく受けます。でも、その友達が責任を取ってくれるわけではありません。迷ったときは、書く前に一度ご相談ください。初回相談は無料です。
永住申請ではさらに厳しく見られる
入管の「永住許可に関するガイドライン」(2026年2月24日改訂)は、要件の一つとして罰金刑や拘禁刑などを受けていないことを挙げています。また、素行が善良であることも求められます。したがって、罰金の前科や、反則金の違反が何度もある場合は、申請時期を慎重に検討しましょう。
さらに、令和6年の入管法改正で、永住者の在留資格を取り消せる場面が広がりました。たとえば、一定の刑罰法令に違反して拘禁刑に処せられた場合です。この規定は2027年4月1日から施行されます。つまり、永住を取ったあとも、法令を守ることがこれまで以上に大切です。
ケース別の判断例
ケース1:万引きで不起訴になった
技術・人文知識・国際業務更新
Aさんは3年前、万引きで取調べを受けました。その後、被害弁償をして不起訴(起訴猶予)になりました。
判断:有罪判決ではないので、一般には「無」とする考え方が多数です。ただし、入管が事実を把握している可能性はあります。そのため、質問されたら事実をそのまま説明できるようにしておきましょう。
ケース2:自転車でスマホを使って青切符
特定技能1号更新
Bさんは2026年5月、自転車でスマホを手に持って使い、青切符を受けました。反則金12,000円は期限内に納めています。
判断:刑罰ではないので「無」とする考え方もあります。しかし、申請書には交通違反を含むとあります。そこで当事務所では、「有」として「2026年5月 自転車の携帯電話使用(保持) 反則金12,000円納付済み」のように書くことをおすすめします。なお、1回だけの軽い違反なら、通常は更新への影響は大きくないと考えられます。
ケース3:夫が酒気帯び運転で罰金を払った
家族滞在夫は技人国
Cさんの夫は2年前、酒気帯び運転で赤切符を受けました。その後、略式命令による罰金を納めています。
判断:略式命令の罰金は前科です。したがって、夫の申請書では必ず「有」とし、罪名・処分内容・時期を書きます。あわせて、理由書で反省と再発防止策を説明しましょう。
ケース4:8年前の罰金は書かなくてよい?
日本人の配偶者等永住申請
Dさんは8年前、傷害事件で罰金刑を受けました。その後は罰金以上の刑を受けていません。
判断:刑法上は、刑の言渡しが効力を失っています。しかし、処分を受けた事実は消えません。そのため、「有」として書き、その後の生活状況を説明するのが安全です。
申請前チェックリスト
- 日本で有罪判決(拘禁刑・罰金。執行猶予付き、略式命令を含む)を受けたことがあるか
- 交通違反の書類が青い紙(反則金)か、裁判所の書類(罰金)か確認したか
- 青切符の反則金を期限内に納めたか(未納で罰金になっていないか)
- 2026年4月以降、自転車で青切符を受けたことがあるか
- 日本国外で刑事処分を受けたことがあるか
- 何年も前の処分を「もう消えた」と思い込んでいないか
- 「有」の場合、罪名・処分内容・時期を具体的に書けるか
- 過去の申請書の記載と、今回の記載が矛盾しないか
- 永住申請の場合、処分の時期と申請のタイミングを検討したか
よくある質問
記載のしかたについて
駐車違反で反則金を払ったことがあります。書く必要はありますか?
反則金は刑罰ではないので、「無」とする考え方もあります。しかし、申請書には交通違反を含むとあります。そのため当事務所では、記載をおすすめしています。日付・違反の種類・納付済みであることを書きましょう。
執行猶予付きの判決で、猶予期間はもう終わりました。
猶予期間を無事に経過すれば、刑の言渡しは効力を失います(刑法27条1項)。ただし、判決を受けた事実は残ります。したがって、「有」として書くのが安全です。
家族の処分歴も書く必要がありますか?
この欄は、申請人本人の処分歴を尋ねるものです。つまり、家族の処分歴は、その家族が申請するときに本人の申請書に書きます。
審査への影響について
交通違反が何回あると更新できなくなりますか?
入管は回数の基準を公表していません。ただし実務家の間では、軽い違反が数年で1〜2回なら影響はほぼない、とする見解が一般的です。一方、短期間に集中している場合は評価が厳しくなります。
前回の更新で書き忘れてしまいました。どうすればいいですか?
たとえば、次回の申請で正しく書き、前回の経緯を説明する方法があります。ただし、状況によって対応は変わります。そのため、放置せずに早めにご相談ください。
処分歴を書いたら必ず不許可になりますか?
必ず不許可になるわけではありません。実際、処分の内容・時期・回数やその後の生活状況が総合的に見られます。だからこそ、正直に書いて、理由書で事情を説明することが大切です。
まとめ:「犯罪を理由とする処分」欄で迷ったら相談を
まず、有罪判決は何年前でも、日本国外のものでも「有」と書きます。次に、不起訴は一般に「無」でよいとされますが、入管の公式な説明はありません。また、反則金は見解が分かれますが、当事務所は申告をおすすめしています。そして、交通違反の許容回数に公式な基準はありません。つまり、記載を誤ると後で取消しの問題にもなりえます。だからこそ、迷ったら書く前に専門家に相談しましょう。
参考資料(一次資料)
- 出入国在留管理庁「在留期間更新許可申請書」様式(項番15)PDF、「在留資格認定証明書交付申請書」様式(項番19)PDF
- 刑法9条・27条・34条の2(e-Gov法令検索)リンク。2025年6月1日施行の改正は令和5年政令第318号による
- 道路交通法128条(e-Gov法令検索)リンク
- 警察庁「自転車への交通反則通告制度(青切符)」リンク
- 出入国在留管理庁「在留資格の取消し(入管法第22条の4)」リンク
- 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)」リンク
実務家の見解(交通違反の回数の目安)
- 「技術・人文知識・国際業務ビザで交通違反が3回あった場合の在留資格更新・取得への影響」(office-hiura.com)リンク
- 「『素行善良』要件の真実|交通違反・軽犯罪は就労ビザ更新・永住申請にどこまで響く?」(visa.katsumi-office.com)リンク
- 「永住権・永住ビザ申請:交通違反履歴がある場合」(continental-immigration.com)リンク
※2026年10月30日時点で確認した内容です。


