母国からの送金に日本の税金はかかる?「かかる人」「かからない人」を来日年数で判定

母国からの送金と日本の税金
外国人の税金・母国からの送金

母国から日本へ送金すると、税金がかかる?
答えは「送金そのもの」ではなく、来日年数と母国の収入で決まります。

読了目安:約20分 | 令和8年4月1日現在の法令等を確認して作成(2026年11月)

「ベトナムの口座から日本にお金を送ったら、税金を取られますか?」という相談をよく受けます。結論から言うと、お金を送ったこと自体に所得税がかかるわけではありません。日本で課税されるかどうかを決めるのは、母国で収入(家賃・利息・配当・給与など)があるかと、日本に何年住んでいるかです。しかも、来日5年を超えると、送金してもしなくても母国の収入はすべて日本の課税対象になります。「送金しなければ大丈夫」と思っている方ほど注意が必要です。この記事では、所得税法の条文と国税庁の通達・タックスアンサーを一つずつ確認しながら、あなたが「かかる人」か「かからない人」かを自分で判定できるところまで整理します。

ひと目でわかる結論

送金そのものお金を送った行為に
所得税はかからない
来日5年以内母国の収入のうち
日本へ送金した分に課税
来日5年超送金の有無に関係なく
母国の収入すべてに課税

※「来日5年以内」は、日本国籍がなく、過去10年以内に日本に住んでいた期間の合計が5年以下の人(税法上の「非永住者」)を指します。日本に住所がなく住んで1年未満の人などは、母国の収入は日本で課税されません。

結論:送金で税金が「かかる人」「かからない人」

まず、あなたがどれに当たるかを確認してください。色付きのラベルは税法上の正式な区分名で、次の章以降で詳しく説明します。

C 非居住者かからない

日本に住所がない、または日本に住んで1年未満で、住所があるとも推定されない人。母国の収入は、送金してもしなくても日本で課税されません(日本で生じた所得だけが対象)。

B 非永住者送金すると、かかることがある

日本に住んでいて、日本国籍がなく、過去10年以内に日本にいた期間の合計が5年以下の人。その年に母国で収入があれば、日本へ送金した額の範囲でその収入が持ち込まれたとみなされ、課税されます。

A 非永住者以外の居住者送金と関係なく、かかる

日本に住んでいて、日本にいた期間の合計が5年を超えている人(日本国籍がある人も)。母国の収入はすべて日本の課税対象で、母国に置いたままでも申告が必要になり得ます。

母国に収入がない人が貯金を送っただけなら?

非永住者の送金ルールは、送金額の範囲でその年の海外の所得から送金があったものとみなす仕組みです(所得税法施行令17条4項1号)。その年に母国での収入がなく、日本に来る前に貯めたお金を送っただけであれば、所得税の対象となる海外の所得がないので、送金によって所得税がかかることはありません。ただし、親や家族からお金を受け取った場合は、所得税ではなく贈与税の問題になることがあります(よくある質問を参照)。

数字で見る例:来日3年目のランさんと、6年目だった場合

日本の給与400万円のほかに、ベトナムの自宅を貸して家賃収入(所得)が年60万円相当ありました。その年に、ベトナムの口座から日本の口座へ50万円相当を送金しました。この場合、日本の給与400万円は当然課税されます。ベトナムの家賃収入は、送金額50万円の範囲で日本に「持ち込まれた」とみなされ、その分が日本の課税対象になります。同じ人が来日6年目(Aの区分)になっていれば、送金の有無にかかわらず60万円全額が日本の課税対象です。

※分かりやすくするための単純化した例です。所得の種類ごとの計算、ベトナムで納めた税金との二重課税の調整(外国税額控除、所得税法95条)などは個別に確認が必要です。

判定のもとになる3つの区分と覚え方

所得税法は、個人の納税義務者を「居住者」と「非居住者」に分け、さらに居住者を「非永住者」と「非永住者以外の居住者」に分けています(所得税法2条1項3号〜5号)。つまり個人は必ず次の3つのどれか1つに当たります。

A非永住者以外の居住者

日本に住所がある(または1年以上住んでいる)人のうち、Bに当たらない人。日本人はほぼ全員ここ。世界中の全ての所得に課税。

B非永住者

居住者のうち、日本国籍がなく、過去10年以内に日本にいた期間の合計が5年以下の人。日本の所得+日本に持ち込んだ海外所得に課税。

C非居住者

居住者でない人。日本に住所がなく、住んでいる期間も1年未満の人など。日本で生じた所得だけに課税。

覚え方:名前を「言い換える」と一気に分かる

法律用語のまま覚えようとすると混乱します。次のように頭の中で読み替えてください。

A=フル課税の居住者世界中の所得が対象
B=来日5年以内の外国籍居住者海外所得は「持ち込んだ分」だけ
C=日本の住人ではない人日本で稼いだ分だけ

「非永住者」の「永住」は、ビザの話ではなく「日本にどれだけ長くいるか」の話です。「5年を超えて日本にいると、税金の上では“永住している人”と同じ扱いになる」と覚えるのが近道です。

行政書士 HOのひとこと実は所得税法には「永住者」という言葉そのものが定義されていません。条文上の正式名は「非永住者以外の居住者」です。実務で略して「永住者」と呼ぶことがあるため、在留資格の永住者と混同されやすいのです。

落とし穴:在留資格の「永住者」とは無関係

入管法の在留資格「永住者」は、出入国在留管理庁が許可する在留の身分です。一方、所得税法の「非永住者」は、税務上の課税範囲を決める区分で、在留資格が何かは判定の基準に入っていません。条文が見ているのは「日本国籍の有無」と「過去10年以内に日本に住所・居所があった期間」だけです(所得税法2条1項4号)。

入管法(在留カード) 何をして日本にいられるか 技術・人文知識・国際業務 特定技能・技能実習・留学… 日本人の配偶者等 在留資格「永住者」 所得税法(税務署) どの所得に課税されるか A 非永住者以外の居住者国籍・滞在年数で判定 B 非永住者外国籍+10年中5年以下 C 非居住者住所なし・1年未満 !
在留資格「永住者」の人でも、税法上はA・B・Cのどれにもなり得ます(点線)。在留カードを見ても税法上の区分は分かりません。

在留資格は「永住者」、税法上は「非永住者」という人は実在し得ます

永住許可は原則として10年以上の在留が必要ですが、出入国在留管理庁の「永住許可に関するガイドライン」(令和8年2月24日改訂)には特例があります。たとえば高度専門職のポイントが80点以上の人は1年以上の在留、日本人の配偶者は実体を伴う婚姻生活が3年以上継続し日本に1年以上在留していれば、永住許可の対象になり得ます。こうした人が来日数年で永住者になった場合、過去10年以内に日本にいた期間の合計がまだ5年以下なら、在留資格は「永住者」なのに、所得税法上は「非永住者」です。逆に、在留資格が「技術・人文知識・国際業務」のままでも、日本に6年住んでいれば税法上は「非永住者以外の居住者」です。

判定フローチャート(3つの質問で決まる)

判定は、上から順に3つの質問に答えるだけです。質問1で「居住者か非居住者か」、質問2と3で「居住者のうちAかBか」が決まります。

スタート:日本に来た個人 質問1 次のどちらかに当たりますか? ① 日本に「住所」(生活の本拠)がある ② 日本に「居所」があり、現在まで引き続き1年以上たっている はい いいえ 居住者 質問2 日本国籍を持っていますか? はい いいえ 質問3 過去10年以内に、日本に住所または 居所があった期間の合計は5年以下ですか? (何回かに分かれていても合計します) はい(5年以下) いいえ(5年超) A 非永住者以外の居住者全ての所得に課税 B 非永住者国外源泉所得以外+国内払い・送金分 C 非居住者国内源泉所得だけに課税
判定フローチャート(所得税法2条1項3号〜5号・7条1項をもとに作成)。「いいえ(5年超)」の矢印はAへ進みます。

文字で確認(スマホで図が小さい方へ)

  1. 日本に住所がある、または日本の居所に引き続き1年以上住んでいる → 居住者へ。どちらでもない → C 非居住者。
  2. 居住者のうち、日本国籍がある → A 非永住者以外の居住者。
  3. 日本国籍がなく、過去10年以内に日本にいた期間の合計が5年以下 → B 非永住者。5年を超えている → A 非永住者以外の居住者。

質問1で一番大事な「住所の推定」

「1年以上住んでいないから自分は非居住者だ」と考えるのは早合点です。日本に来た人が日本で継続して1年以上住むことを通常必要とする職業を持っている場合は、来日した時点から「日本に住所がある人」と推定されます(所得税法施行令14条1項1号)。そして、その人と生計を一にする配偶者や扶養親族が日本で一緒に暮らす場合は、家族も住所がある人と推定されます(同条2項)。国税庁の通達では、在留期間が契約などであらかじめ1年未満と決まっていることが明らかな場合を除き、この「1年以上居住を通常必要とする職業」に当たるものとして扱われます(所得税基本通達3-3)。期間の定めのない雇用で来日した会社員の多くが、来日直後から居住者になるのはこのためです。

「住所」「居所」「1年」の正しい意味

「住所」=生活の本拠(住民票の住所とは限らない)

所得税法の住所は「各人の生活の本拠」をいい、生活の本拠かどうかは客観的事実で判定します(所得税基本通達2-1)。国税庁は、住居・職業・資産の所在・親族の居住状況・国籍などの客観的事実で判断すると説明しています(タックスアンサーNo.2012)。住民票があるかどうかだけで決まるわけではありません。

「居所」=本拠ではないが実際に住んでいる場所

居所は、生活の本拠とまではいえないものの、その人が現実に居住している場所をいいます(タックスアンサーNo.2875)。住所がなくても、居所が「現在まで引き続いて1年以上」続けば居住者になります。

「1年」はいつから数える?

1年の起算日は入国の日の翌日です(所得税基本通達2-4)。入国直後に住所がなく、1年を経過する日まで住所を持たなかった人は、1年を経過する日までは非居住者、その翌日から居住者です(同2-3(1))。途中で住所を持った場合は、住所を持った日から居住者になります(同2-3(2))。

「183日ルール」は日本の所得税法の基準ではありません

「1年の半分(183日)以上いれば居住者」という話をよく聞きますが、日本の所得税法は滞在日数だけで判断しません。国税庁も、外国に183日以上滞在していても日本の居住者となる場合があると明記しています(タックスアンサーNo.2012)。183日は租税条約の短期滞在者免税などで使われる別の数字です。

予定が変わったら?

1年以上の予定で来日(または出国)した後に予定が変わった場合は、事情が変わった時点で判定し直します。ただし、さかのぼって区分が変わることはありません(国税庁 質疑応答事例「業務の都合により1年未満で帰国したり、海外勤務が1年以上となった場合の居住者・非居住者の判定」)。

区分ごとに、どの所得に税金がかかるか

区分が決まると、日本で課税される所得の範囲が決まります(所得税法7条1項)。違いが出るのは主に海外で生じた所得の扱いです。

所得を3つの層に分けると、課税範囲が一目で分かる ① 日本で生じた所得日本の会社の給与、日本の預金利息、日本の不動産収入 ② 海外の所得のうち日本で支払われた分、日本へ送金された分 ③ 海外の所得のうち海外で受け取り、海外に置いたままの分 ABC 非永住者以外の居住者非永住者非居住者 ①②③すべて課税 ①②課税 ③は原則課税されない※ ①だけ課税 ②③は課税されない
※非永住者でも、一定の海外の有価証券の売却益は送金がなくても課税対象です(所得税法7条1項2号かっこ書、同法施行令17条1項)。図は理解のための簡略化です。①は正確には「国内源泉所得」、Bの課税範囲は条文上「国外源泉所得以外の所得及び国外源泉所得で国内において支払われ、又は国外から送金されたもの」です。
区分定義(要旨)課税される所得(所得税法7条1項)
A非永住者以外の居住者居住者のうち非永住者でない人全ての所得(日本・海外を問わない)
B非永住者居住者のうち、日本国籍がなく、過去10年以内に国内に住所・居所があった期間の合計が5年以下の人国外源泉所得以外の所得、および国外源泉所得で日本国内で支払われたもの・国外から送金されたもの
C非居住者居住者以外の個人国内源泉所得(所得税法164条の区分に応じて定められたもの)

非永住者の「送金」ルールの正確な中身

非永住者が、その年に海外から日本へ送金を受けた場合は、その送金額の範囲内で、その年の海外の所得(海外で支払われたもの)から送金があったものとみなされます(所得税法施行令17条4項1号)。その年に海外の所得がある場合、「この送金は貯金だから所得ではない」と自分で区別できるわけではない点に注意が必要です(冒頭のランさんの例を参照)。なお、海外で支払われた所得のうち国外源泉所得以外のものがある場合は、まずそちらから送金があったものとみなされます(同号ただし書)。

行政書士 HOのひとこと日本の会社からの給料だけの方は、AでもBでも税金は同じです。区分の違いが効いてくるのは、母国に家賃収入・預金利息・株などの所得がある方です。来日から5年を超えるタイミングで扱いが変わるので、心当たりのある方は早めに税理士へ相談してください。

「5年」の数え方と一時帰国の扱い

非永住者かどうかの「過去10年以内に5年以下」は、国税庁の通達で数え方が決まっています。

ルール内容根拠
「過去10年以内」の範囲判定する日の10年前の同日から、判定する日の前日まで所得税基本通達2-4の2
期間の数え方暦に従って計算し、1か月に満たない期間は日数で数える。複数回に分かれる場合は年・月・日をそれぞれ合計し、30日を1か月、12か月を1年とする所得税基本通達2-4の3
入国・出国がある場合期間は入国の日の翌日から出国の日まで所得税基本通達2-4の3
5年を超えたとき5年以内の日までは非永住者、その翌日以後は非永住者以外の居住者所得税基本通達2-3(3)
一時的な出国日本に配偶者など生計を一にする親族を残す、戻って住む家を保有している、生活用品を預けているなど、出国が明らかに一時的と認められるときは、出国中も引き続き日本に居所があるものとして扱う所得税基本通達2-2
期間の定めのない雇用で来日した 外国籍の会社員の例 住所の推定により入国時から居住者(施行令14条) B 非永住者日本にいた期間の合計が5年以下の間 A 非永住者以外の居住者 入国翌日から数える 合計5年を超えた日この日以後はA
過去に日本に住んでいた期間がある人(元留学生・元技能実習生など)は、その期間も合計に入るため、Aに変わる時期が早まります。

元技能実習生・元留学生は特に注意

「今の会社に入ってまだ2年だから非永住者」とは限りません。過去10年以内に技能実習や留学で日本に住んでいた期間があれば、それも「日本に住所または居所を有していた期間」として合計します。国税庁の質疑応答事例でも、過去に外交官として日本に住んでいた期間を含めて判定するとされています。

ケースで確認:8人の外国人の判定

以下は条文と国税庁の資料に当てはめた一般的な判定です。実際の判定は個々の事実関係で変わることがあります。

ケース1〜2:技能実習生と来日直後の会社員

ケース1 技能実習1号のみで来日し、1年以内に帰国するトゥアンさん

入国後講習を含め、入国日の翌日から1年を経過する日までに帰国する予定で、2号には移行しません。

C 非居住者国税庁は、この事例と同じ条件の技能実習生について、日本に住所がある事実が認められない限り一般的には非居住者と判定されると説明しています(タックスアンサー「別紙 住所の推定」事例)。非居住者の日本での給与は、原則として一律20.42%で源泉徴収され、それで課税関係が終わります。2号へ移行して1年を超えて滞在する前提であれば、判定が変わり得ます。

ケース2 「技術・人文知識・国際業務」で来日2年目のミンさん(ITエンジニア)

期間の定めのない雇用契約。日本で初めて暮らしています。収入は日本の会社の給与だけです。

B 非永住者住所の推定により来日直後から居住者、日本国籍がなく日本にいた期間は5年以下なので非永住者です。ただ、収入が日本の給与だけなので、源泉徴収・年末調整の扱いは日本人と同じです。

ケース3〜4:来日年数と在留資格のずれ

ケース3 来日7年目、ベトナムに賃貸物件を持つフオンさん

元留学生で、現在は日本の会社員。ベトナムの家賃は現地口座に入り、日本には送金していません。

A 非永住者以外の居住者過去10年以内に日本にいた期間が5年を超えているため、全ての所得が課税対象です。ベトナムの家賃収入は、日本に送金していなくても日本の所得税の対象になり、確定申告が必要になり得ます。ベトナムで納めた税金との調整は外国税額控除の制度(所得税法95条)で検討します。

ケース4 高度専門職80点以上で、来日1年余りで永住許可を受けたタインさん

それ以前に日本に住んだことはありません。在留カードの在留資格は「永住者」です。

B 非永住者在留資格は永住者でも、日本にいた期間の合計が5年以下なので、税法上は非永住者です。在留資格と税法上の区分がずれる典型例です。

ケース5〜6:帰化した人と留学生

ケース5 日本人と結婚し、日本に帰化したリンさん

来日4年目で日本国籍を取得しました。

A 非永住者以外の居住者非永住者の要件は「日本の国籍を有しておらず」が前提です。日本国籍を取得した以上、日本にいた期間が5年以下でも非永住者には当たりません。

ケース6 大学に通いながらアルバイトをする留学生のハイさん

ベトナムの両親から生活費の仕送りを受けています。

通常は居住者大学で学ぶために日本に住む人は、在学期間中、日本で職業に就いているものとみなして住所の有無を推定します(所得税基本通達3-2)。在学期間が1年以上なら、来日時から日本に住所がある人と推定されるのが一般的です。そのうえで、日越租税協定20条により、学生が生計・教育のために受け取る給付は、日本の国外から支払われるものに限り日本で免税です。国税庁は、ベトナムから来日した大学生の日本でのアルバイト所得は国外から支払われるものではないため免税にならないと明記しています。アルバイト給与は、免税にならず、判定した区分(通常は居住者)に応じて源泉徴収されます。日本語学校などの各種学校の就学生は、そもそも学生条項の対象外とされています。

ケース7〜8:海外赴任と一時帰国

ケース7 在留資格「永住者」のまま、ベトナムで3年間働くことになったナムさん

再入国許可を取り、家族も連れてベトナムへ。日本の住居は引き払いました。

C 非居住者国外で継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を持つ場合は、日本に住所がない人と推定されます(所得税法施行令15条1項1号)。在留資格が永住者のままでも、税法上は出国の時から非居住者で、日本で課税されるのは日本の預金利息など国内源泉所得だけになります。

ケース8 年末年始に2か月ベトナムへ一時帰国したトゥーさん(来日4年目)

日本のアパートは契約したまま、妻と子は日本に残っています。

B 非永住者のまま出国が明らかに一時的と認められるため、帰国中も引き続き日本に居所があるものとして扱われます(所得税基本通達2-2)。一時帰国の期間も「日本にいた期間」として合計されるので、5年の到来が遅れることはありません。

住民税は別のルール

ここまでの区分は国の税金である所得税の話です。住民税は地方税法で別に決まっていて、その年の1月1日(賦課期日)に市区町村内に住所がある個人が、前年の所得に対して課税されます(地方税法294条1項1号)。総務省は、国籍に関係なく住所の有無で決まること、1月2日以降に出国しても納税義務は変わらないこと、住民税を納めていないと在留期間の更新などが許可されない場合があることを案内しています。

帰国・転職の前に必ず確認

会社を辞めたり帰国したりすると、給与天引き(特別徴収)が止まり、自分で納める(普通徴収)形に切り替わることがあります。帰国前に納めきれない場合は、日本にいる人を納税管理人として届け出るのが一般的です。未納は、将来の在留期間更新や永住許可申請にも影響します。

税金や社会保険料を払わずに帰国した場合に再来日できるのかは、別の記事で詳しく解説する予定です。

ベトナムの方が特に注意したい点

  • ベトナムの不動産・預金・株:来日から5年を超えると、送金していなくても日本で課税対象になります(Aの区分)。5年以内でも、日本へ送金すれば課税対象になり得ます(Bの区分)。
  • 留学生・技能実習生の租税条約:日越租税協定20条の免税は「日本の国外から支払われる」生計・教育・訓練のための給付に限られます。日本での給与は免税になりません。
  • 「183日以内だから大丈夫」は誤解:日本の居住者判定は日数ではなく、住所・居所と職業などの事実で決まります。
  • 元技能実習生が技人国や特定技能で再来日:過去の日本滞在期間が合計に入るので、Aへの切り替わりが早く来ます。
  • 永住申請との関係:永住許可に関するガイドラインは、納税などの公的義務を適正に履行していることを求めています。申請時点で納付済みでも、本来の納付期限までに納めていなかった場合は原則として消極的に評価されるとされています。
行政書士 HOのひとこと永住申請のご相談で、母国の所得を申告していなかったことが後から分かるケースがあります。申請の前に、ご自身の区分と申告状況を一度確認しておくことを強くおすすめします。

セルフチェックリスト

次の項目を順に確認すると、自分の区分と注意点が分かります。

  • 日本に生活の本拠(住居・仕事・家族など)がある、または日本に住み始めて1年を超えている
  • 日本での仕事は、契約上1年未満で終わることがあらかじめ決まっていない
  • 日本国籍を持っていない
  • 過去10年以内に日本に住んでいた期間(留学・技能実習の期間を含む)を合計すると5年以下である
  • 母国に家賃収入・預金利息・配当・株の売却益などの所得がある
  • その年に母国の口座から日本の口座へお金を送った
  • 1月1日に日本に住所があった(住民税の対象になる)
  • 帰国・長期出国の予定がある(区分が変わる可能性がある)

1〜2が当てはまれば居住者の可能性が高く、さらに3〜4が当てはまれば非永住者、4が当てはまらなければ非永住者以外の居住者の可能性が高くなります。5〜6が当てはまる方は、確定申告の要否を税理士に確認してください。

よくある質問

貯金・家族からの送金について

来日前に貯めたお金を日本に送っただけでも、税金はかかりますか?

その年に母国で収入がなければ、送金によって所得税がかかることはありません。非永住者の送金ルールは、送金額の範囲で「その年の」海外の所得から送金があったとみなす仕組みだからです(所得税法施行令17条4項1号)。その年に母国で家賃や利息などの収入がある場合は、送金額の範囲で課税対象になり得ます。

親からの仕送りや、家族から送られたお金に税金はかかりますか?

これは所得税ではなく贈与税の問題です。国税庁によると、親子や夫婦などの扶養義務者から、生活費や教育費として必要な都度直接充てるために受け取る、通常必要と認められる範囲のお金には贈与税がかかりません(タックスアンサーNo.4405)。一方、生活費などの名目でも、預金や株式・不動産の購入に充てた場合は贈与税の対象になります。また、外国人の場合は、在留資格や日本に住んだ期間、贈与する人の住所によって贈与税の課税範囲が変わる仕組みがあります(タックスアンサーNo.4432)。まとまった金額を受け取る場合は、事前に税理士に確認してください。

区分の見分け方について

在留カードを見れば、自分の税法上の区分は分かりますか?

分かりません。所得税法の区分は、在留資格ではなく、住所・居所の有無、日本国籍の有無、過去10年以内に日本にいた期間で決まります。

非永住者なら、日本の給料にかかる税金は安くなりますか?

いいえ。日本の会社からの給与は日本で生じた所得なので、非永住者でも非永住者以外の居住者でも同じように課税されます。違いが出るのは海外で生じた所得の扱いです。

非永住者は、海外の所得を日本に送金しなければ一切課税されませんか?

原則としてそうですが、例外があります。一定の海外の有価証券の売却による所得は、送金がなくても課税対象とされます(所得税法7条1項2号かっこ書、同法施行令17条1項)。海外で株や投資信託を持っている方は個別に確認してください。

年の途中の変更・非居住者・相談先について

年の途中で区分が変わったらどうなりますか?

区分が変わった日を境に、それぞれの期間の区分に応じて課税範囲が決まります。非永住者の送金ルールも、非永住者であった期間内の所得と送金について適用されます(所得税法施行令17条4項6号)。予定が変わったことによる再判定は、さかのぼって区分を変えるものではありません。

非居住者の給与はどう課税されますか?

国税庁の資料では、非居住者が支払を受ける給与の所得税等は支給額に一律20.42%を掛けて計算し、原則として源泉徴収で課税関係が完結するため確定申告は不要とされています。日本と相手国の租税条約で免除・軽減される場合もあります。

自分の区分を正式に確認したいときはどこに聞けばいいですか?

勤務先の給与担当(源泉徴収の際に判定しています)、最寄りの税務署、または税理士に確認してください。個別の税額計算や申告書の作成は税理士の業務です。

このテーマで行政書士ができること・できないこと

行政書士は、個別の税務相談や税額計算、申告書の作成は行えません(税理士の業務です)。当事務所では、在留期間更新・永住許可申請など在留手続の場面で求められる納税状況の確認や必要書類の案内をお手伝いし、税務の個別判断が必要な場合は税理士への相談をおすすめしています。

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出典(一次資料)

  1. 所得税法 第2条第1項第3号〜第5号、第7条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
  2. 所得税法施行令 第14条、第15条、第17条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
  3. 国税庁「所得税基本通達 〔居住者、非永住者及び非居住者(第3、4、5号関係)〕」2-1〜2-4の3 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/01/01.htm
  4. 国税庁「所得税基本通達 法第3条《居住者及び非居住者の区分》関係」3-2(学術、技芸を習得する者の住所の判定)、3-3(国内に居住することとなった者等の住所の推定)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/01/08.htm
  5. 国税庁 タックスアンサーNo.2010「納税義務者となる個人」(令和8年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2010.htm
  6. 国税庁 タックスアンサーNo.2875「居住者と非居住者の区分」および「別紙 住所の推定」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2875.htm https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2875-1.htm
  7. 国税庁 タックスアンサーNo.2012「居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2012.htm
  8. 国税庁 質疑応答事例「業務の都合により1年未満で帰国したり、海外勤務が1年以上となった場合の居住者・非居住者の判定」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/01/02.htm
  9. 国税庁 質疑応答事例「非永住者の判定(過去に外交官として国内に居住していた場合)」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/01/07.htm
  10. 国税庁 質疑応答事例(中国・インドから来日した大学生のアルバイト/日越租税協定20条の注記)https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/06/62.htm、同(外国人就学生)https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/06/16.htm
  11. 国税庁 パンフレット(外国人の方向け給与の源泉徴収・非居住者20.42%)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0021012-060.pdf
  12. 国税庁 タックスアンサーNo.4405「贈与税がかからない場合」、No.4432「受贈者が外国に居住しているとき」(令和8年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4432.htm
  13. 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan50.html
  14. 総務省「外国人の方の個人住民税について」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/individual-inhabitant-tax.html、同 資料「出国者等に係る個人住民税の調査等」(地方税法294条)https://www.soumu.go.jp/main_content/001029062.pdf

本記事は2026年11月時点で上記資料を確認して作成した一般的な解説であり、個別の税務判断を示すものではありません。

HO THE CUONG(ホー・テー・クン)

HO行政書士事務所 代表。兵庫県行政書士会所属(登録番号 23300677)。神戸市長田区を拠点に、在留資格・永住・帰化など外国人の入管手続を専門に扱う。登録支援機関として特定技能外国人の支援にも携わる。

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